
今回のテーマは「低速モード」です。


一口に「低速モード」といっても、様々な意味合いがあるので、その内容の違いや活用方法などについて、分かりやすく解説してゆきます。
目次
低速モードとは~無料で使える最低限の速度・品質を持っている
実は「低速モード」は一部を除き、ほとんど全ての通信サービスで提供されています。

そんな声が聞こえてきそうですが、そもそも低速モードとはいったい何なのか…がわかると、「ほとんど全ての通信サービスで提供している」という意味が見えてくるはずです。
低速モードはそのプランの「素」の通信速度のこと
モバイル通信の多くは、月間の高速通信容量に応じた料金が設定されています。
例えば、○○モバイルでは3GB/月=990円や、××通信では10GB/月=2,980円などです。
この料金プランの仕組み言い換えると、『高速通信容量』を有料で購入していることになり、購入した『高速通信容量』を使い切ると速度がグンと遅くなりますが、この通信速度が遅くなった状態こそが、このプランの「素」のスピードであり、「低速モード」の正体です。
料金プランは、『高速通信容量』を使い切ったからといって、完全に通信を遮断してしまうことはできません。
完全遮断してしまっては、他の人からのメールも届かなくなりますし返信することもできず、それでは緊急の際などに困るので、最低限の通信は可能にしておく必要があります。
ただし、『高速通信容量』を有料で買って貰っていますから、「素」の「低速モード」でお金は取れないので、『高速通信容量を使い切ったら無料で最低限の通信を提供』することになっているわけです。
この最低限の事ができるだけの通信こそが本来の低速モードなので、ほとんどの通信サービスが提供している…というわけです。
低速モードは遅い…という批判は当たらない?
いわゆる一般に言う「低速モード」は、速度が遅い通信を無料で使い放題で使えるモードという理解をしている方が多いと思います。
その「遅い速度の通信」は、前項で解説した「素の通信サービス」のことです。
高速通信容量を使い切った際に自動的に適用されていたものを、高速通信容量を使い切らないうちに、ユーザーが任意で遅いモードに切り替えられるようにしたのが、今でいう「低速モード」や「節約モード」というわけです。
ですから、『低速モードは遅くて実用にならない』等という批判的な意見は当たっているとは言えません。
本来、高速通信容量を使い切った場合に最低限の通信として提供されていたものなので遅くて当たり前なのです。
もともと高速通信容量を使い切った際に、せめてメールだけでも使えないと困るから…と言う形で提供されたサービスを、任意で使えるようにしただけなので、過大な期待に値するサービスではないと言えるのです。
とはいえ、昨今では低速モードも高速化される傾向にあり、300kbpsや1Mbpsといった速度での提供も増えており、実用性が増して使い勝手が向上しています。
低速モードを提供しているおすすめの格安SIMサービス
ここからはいよいよ具体例を出して低速モードを提供している通信サービスを紹介します。
おすすめの格安SIM5社を比較しつつ解説します。
格安SIMサービス | 料金プラン | 低速モード | 低速モード切換え |
UQmobile | くりこしプランS | 最大300kbps | アプリ |
↑ | くりこしプランM・L | 最大1Mbps | アプリ |
IIJmio | ギガプラン | 最大300kbps | アプリ |
mineo | マイピタ | 最大200kbps | アプリ |
OCNモバイルONE | 新コース | 最大200kbps | アプリ |
楽天モバイル | UN-LIMIT | 最大1Mbps | アプリ |
UQモバイルの節約モード
料金プラン | データ容量 | 月額料金(音声通話付) | 低速モード |
くりこしプランS | 3GB | 1,628円 | 300kbps |
くりこしプランM | 15GB | 2,728円 | 1Mbps |
くりこしプランL | 25GB | 3,828円 | 1Mbps |
UQモバイルは元々はauと同じKDDI傘下のMVNOで、その当時から低速モードを提供していたため、auに吸収されてサブブランドとなった現在でもキャリアの通信サービスとしては珍しく低速モードの提供を継続しています。

UQモバイルの「くりこしプランS」では、バースト転送機能付き300kbpsの低速モードを提供しています。
さすがにキャリア品質での低速モードは、常に制限いっぱい200kbpsまで速度が出ていて非常に使い勝手のよい低速モードとなっています。
容量の大きい「M」「L」の低速モードは、バースト転送機能付き1Mbpsを利用可能です。
特別に大きなファイルや、高負荷のオンラインゲームでもない限り、遅くて使いものにならない…などということは、まずあり得ない速度です。
しかもキャリア品質ですので、場所や時間帯による速度低下もほとんどなく低速モードと言えども快適な通信環境を提供しています。
なお、UQモバイルの節約モードには、転送量の上限設定はありません。
IIJmioの高速データ通信の低速モード
料金プラン | データ容量 | 月額料金(音声通話付) | 低速モード |
ギガプラン | 2GB | 850円 | 300kbps |
↑ | 4GB | 990円 | 300kbps |
↑ | 8GB | 1,500円 | 300kbps |
↑ | 15GB | 1,800円 | 300kbps |
↑ | 20GB | 2,000円 | 300kbps |
技術力に定評があり高品質な通信サービスを提供するIIJmioは、NTTドコモ回線/au回線で低速モードを提供しています。
IIJmioの低速モードは、バースト転送機能付きの300kbpsの低速モードを提供しています。
ただし、他社より100kbps速いことになっていますが、実効速度は理論値ほど出ていないという評判が多めですので、低速時の快適さを求めるとガッカリすることになるかもしれません。

OCNモバイルONEを運営するNTTコミュニケーションズと並んで通信関連の技術力の高さには定評があるのですが、通信速度に関してはあまり速さを追い求めていないようで、高速通信の方も他社比較であまり速いとは言えないのは残念なところです。
IIJmioの低速モードにも「3日間制限」が設けられており、3日間の転送上限は366MBです。
mineo(マイネオ)の低速モード
mineoは、関西電力グループの「オプテージ」が運営するMNVOで、NTTドコモ/au/Softbankの3回線の格安通信サービスを提供するマルチキャリア格安SIMです。
料金プラン | データ容量 | 月額料金(音声通話付) | 低速モード |
マイピタ | 1GB | 1,298円 | 200kbps |
↑ | 5GB | 1,518円 | 200kbps |
↑ | 10GB | 1,958円 | 200kbps |
↑ | 20GB | 2,178円 | 200kbps |
mineoでは、任意で低速モードを利用可能で、バースト転送機能を備えた最大200kbpsの低速モードを提供しています。
また、通常の低速モードは200kbpsですが、有料オプションの「パケット放題Plus」(月額385円・10GB以上は無料)を利用している場合には低速でも最大1.5Mbpsで利用可能です。
ただし、「パケット放題Plus」の場合、3日間の転送量が10GBを超えると200kbpsに速度が制限されますので要注意です。通常の低速モードでは、3日間制限が適用されないため比較的自由に利用することができます。
OCNモバイルONEの節約モード
料金プラン | データ容量 | 月額料金(音声通話付) | 低速モード |
新コース | 1GB | 770円 | 200kbps |
↑ | 3GB | 990円 | 200kbps |
↑ | 6GB | 1,320円 | 200kbps |
↑ | 10GB | 1,760円 | 200kbps |
NTTコミュニケーションズが運営する「OCNモバイルONE」は、ドコモ回線を使った格安SIMで、バースト転送機能を備えた最大200kbpsの低速モードを提供しています。
スマホ端末と通信回線のセットが非常に割安なことで有名なOCNモバイルONEですが、通信品質についても良質なことが知られています。
通信関係の技術力が高く、最近では一般的になった特定コンテンツの通信量をカウントしない「カウントフリー」を最初にLINEモバイルに提供したのがNTTコミュニケーションズです(「カウントフリー」という言葉はNTTコミュニケーションズの登録商標です)。

OCNモバイルONEでは、3日間制限を設けていません。使用したデータ量によって低速モードの速度が制限されることはありません。
楽天モバイルの低速モード
料金プラン | データ容量 | 月額料金(音声通話付) | 低速モード |
UN-LIMIT | 1GBまで | 0円 | 1Mbps |
↑ | 3GBまで | 1,078円 | 1Mbps |
↑ | 20GBまで | 2,178円 | 1Mbps |
↑ | 20GB超 | 3,278円 | 1Mbps |
楽天モバイルの低速モードは他社とは仕様が全く異なるので注意が必要です。
楽天モバイルでも「データ高速モード」のON/OFF切換えによって、1Mbpsの高速モードOFFの状態(=低速モード)にすることができます。
しかし、楽天モバイルの場合には他社のような無料で低速通信を上限なく提供する「低速モード」の仕組みではなく、パートナー(au)エリアでの容量消費を防ぐツールでしかありません。

楽天モバイルの低速モードは以下の条件がいずれも適用されます。
ココに注意
- 低速モードにするとパートナーエリアで容量を消費しない
- 楽天モバイルとしての利用量としてはカウントされる
つまり、低速化できるのはパートナー(au)エリア内のみで、楽天モバイル圏内では低速に切り替えることができない上、au圏内でも容量は減少しないものの請求の元になる利用量としてはカウントされてしまいます。
例えば、au圏内で高速通信OFFにしておけば確かに最大5GBの容量は減少しませんが、容量が減少しないままずっと使い続けられるため、請求時には利用量としてカウントされた転送量で請求されることになるわけです。
従って、料金コストを抑えるために低速通信で我慢する…という考えは成り立ちません。
楽天モバイルの高速通信OFFは、他社の低速モードとは別物と考えた方が良いでしょう。
※上記の5社以外にも低速モードを提供している格安SIMがありますので簡単にご紹介しておきます。
イオンモバイルの低速通信
イオンモバイルもNTTドコモ回線/au回線のサービスを提供するマルチキャリアですが、それぞれの回線でバースト転送機能付き最大200kbpsの低速モードを提供しています。
イオンモバイルの低速モードでは、タイプ1(音声通話機能付き)のSIM(ドコモ/au回線)の場合、3日間で366MBの転送上限を設けており、これを超えた場合には、200kbpsよりもさらに遅い速度に制限がかかる場合があります。
イオンモバイル公式サイトエキサイトモバイルの低速通信
同じNTTグループの企業ということで、ドコモ回線のみを提供する格安SIMですが、バースト転送機能を備えた最大200kbpsの低速モードの提供を行っています。
エキサイトモバイルでも、3日間で366MBの転送上限を設けており、超過の場合にはさらに速度が制限されます。
エキサイトモバイル公式サイトロケットモバイル~200kbpsで無制限使い放題の常時低速モード
ロケットモバイルの「神プラン」は、通信速度最大200kbpsでデータ容量無制限で利用できるプランですが、月額328円の利用料金がかかります。
「神プラン」は高速データ通信容量を購入することはできず、「常時低速プラン」として常に最大200kbpsでしか通信できない「使い放題プラン」です。
他社の高速通信と低速通信を使い分けるような「低速モード」とは少し内容が異なりますが、最大200kbpsしか出ないことが許容できるのであれば、非常に割安な使い放題プランと言えます。
ロケットモバイル公式サイト低速モードの実用性~低速モードについてもっと知ろう
せっかく提供されている低速モード、速度が遅いから使わない…なんて言わずに、使えるものは上手に活かしたいですよね。

ここでは、低速モードがどの程度の実用性があって、どのようなコンテンツなら利用可能なのかを見てゆきます。
低速モードの通信速度表示の意味
最初に「低速モード」の定義を確認しておきます。

〇(1)当社の低速モードは最大で200kbpsまで出ますが、状況によっては遅い場合もあります
×(2)当社の低速モードは最大で200kbpsまでで、常に200kbpsを保証します
(1)の「状況によっては遅い場合もある」が正解。
高速通信もそうであるように低速モードも、モバイル通信の速度というものは「ベストエフォート」方式で表されるので、最も速度が出た際の速度で表します。
つまり、最大200kbpsの低速モードは、最も速くても200kbpsで、混雑する時間帯や場所で使用する場合には、200kbpsよりもっと遅くなる可能性があるという意味なんです。

こうして低速モードの本来の意味を考えれば通信速度は遅くて当たり前だし、元々最低限メールぐらいはできないと…と提供しているサービスであって、提供する側は「何でも快適に使えます」なんて一言も言っていないのです。
YOUTUBEは低速でも視聴できるのか~YOUTUBEの公式見解
YOUTUBEって最高・最低でどの程度の解像度かご存じですか?

正解です。最高~最低までの解像度の動画をスマホで視聴に必要な通信速度ってお分かりですか?

出典:YOUTUBEヘルプ(https://support.google.com/youtube/answer/78358?hl=ja)
こちらはYOUTUBEヘルプが公式に推奨する解像度ごとの通信速度です。
最も解像度の低い360pでは、通信速度は0.7Mbps(≒717kbps)を推奨しています。

出典:YOUTUBEヘルプ(https://support.google.com/youtube/answer/74663?hl=ja)
こちらはより低速な通信速度での視聴についての記載で、わずか56kbpsでも240pであれば視聴が可能であることを明記しています。

つまり、YOUTUBEの公式見解としては、モバイル通信の低速モード200kbpsであってもYOUTUBE動画は視聴可能であるというわけです。
低速モードで何ができるのか~速度ごとの利用可能コンテンツ
ここでは一般的に言われているコンテンツごとに必要な通信速度について見てゆきます。
コンテンツ | 低速モードでの利用 | 推奨される通信速度 |
テキスト(メール) | ◎ | 200kbps以下 |
テキスト+画像 | 〇 | 200kbps |
ブログ | △ | 300kbps |
低解像度の動画(240P) | △ | 300kbps |
高画質の画像 | △ | 1Mbps |
高解像度の動画(2080P) | × | 5Mbps |
オンラインゲーム | × | 20Mbps超 |
※データはあくまで経験則に基づく個人の見解です
テキストだけのメールであれば低速モード200kbpsまでも必要がない程度です。
画像を1枚添付すると、画質にもよりますがそれでも少し時間はかかるかもしれませんが、200kbpsで充分送受信可能です。
ブログの多くは掲載画像の解像度を落として表示を早くしていますので、さほど速い通信速度でなくても充分に実用的に閲覧できますし、前項のYOUTUBEヘルプの見解では、240p解像度の動画なら300kbpsで視聴可能となっています。
ブログ以外のWEBサイトで、特に高画質であることが必須でないケースでは1Mbpsあれば実用的に閲覧可能でしょう。
ここまでが低速モードで利用可能なコンテンツに分類できますが、高解像度動画や4K動画、オンラインゲームなどを低速モードで利用するのは現実的ではありません。
低速モードの快適性をアップする「バースト転送機能」
低速モードには、利用を快適にするための機能「バースト転送」を備えている場合があります。


スマホを快適に使用するにはデータの読み込みの速さが重要ですが、低速モードでは通信速度が遅いためにどうしてもデータ読み込みが遅く、快適とは言い難いものがあります。
しかし、バースト機能を搭載することで、コンテンツ利用のための通信の始めの部分だけ「高速通信」を行いデータ読み込みを補うことができます。
メールやSNSトークなど軽めのデータであれば最初の高速通信で全てのデータを読み切ってしまいますし、動画などの大きなデータでも高速通信で多くのデータを読み込んでおくため、低速だけでの読み込みよりも表示や再生がスムーズになるのです。
一部の通信サービスで提供されていますので、通信会社を選ぶ際に1つのチェックポイントにしてもよいと思います。
使い過ぎると通信速度がさらに遅くなる「3日間制限」
低速モードの利用には料金はかかりませんが、無制限で使い放題というわけではありません。
公共の資産である電波の公平利用の観点から、3日間で一定の転送量を超えると通信制限が課される場合がありこれを通称「3日間制限」「3日間あたりの通信規制」などと呼びます。
「3日間制限」は低速モードを提供する全ての通信サービスで導入されているわけではなく、転送量上限を定めていない通信サービスもあります。
低速モードが使える格安SIMまとめ
- 任意で低速通信を利用できる低速モードを提供している格安SIMがある
- 低速モードは、低速通信を無料で利用することができる
- 低速モードの通信速度は、200kbps/300kbps/1Mbpsがある
- 低速モードの通信速度は遅くて当たり前である
- 低速モードでも、メールやSNS、軽めのWEB閲覧などは充分可能である
- 高速通信で転送量を補う「バースト転送」機能を備える場合がある
- 3日間で所定の転送量を超えると速度制限を受ける場合がある
- ロケットモバイル・楽天モバイルは他社低速モードとは少し内容が違う
低速モードは本来、モバイル通信プランの「素」の通信速度を任意に利用できるようにしたサービスで、所定の期間に一定の転送量を超えない限り無料でデータ容量の上限なく利用することができます。
もともと高速通信容量を使い切った後の最低限のデータ通信なので遅くて当たり前、快適な通信を求めるようなサービスではありません。
しかし昨今では、300kbps/1Mbpsと速度上限が引き上げられた低速モードも登場していて利便性は向上しています。
各社の低速モードの内容や制限ルールなどを理解した上で上手に使いこなしてみてください。